ナッシュが見た苦悩の末の答えとは

久しぶりの投稿。

 先日見た「ビューティフル・マインド」がかなり印象に残ったので紹介したい。

ビューティフル・マインドは2001年公開の映画で、アカデミー賞作品賞を受賞している。

現実との相違点はあるが、作品の内容をベースに書かせていただく。

  

主人公ジョン・ナッシュは天才数学者。

「この世すべてを支配できる理論を見つけたい」

そんな願いを果たすために、孤独な研究に没頭する。

そして、既存の経済理論をくつがえす均衡理論を発表した。

晴れて研究員の職を獲得し、結婚もして順風満帆な人生かと思われた。

しかし政府から暗号解読を強要され、重圧からか、次第に精神をむしばまれていく。

幻覚に苦しみながらも、決して考えることを諦めないナッシュ。

アリシアに支えられながら、彼が人生をかけて導き出した理論とは…

 

 

本作品の主人公ジョン・ナッシュは、ゲーム理論を発見したことで有名であろう。

経済学を学ぶたいていの人なら聞いたことがあるかもしれない。

この理論を発見したのが大学院の博士課程時代というのは驚きである。

1994年には、このゲーム理論ノーベル経済学賞を受賞した。

しかし残念なことに、2015年に交通事故で夫婦ともに亡くなってしまった。

 

 

この作品の見どころのひとつは、ナッシュの波乱万丈な人生である。

数学者のイメージといったら、社交的でなく、何もかもを数字やら理論やらに当てはめて考えたり、のようなものだが、彼はそれを10倍濃くしたような人だ。

恋愛までも理論で考えてしまっている。

そんなカタブツのナッシュはマサチューセッツ工科大学の研究員だったときに、当時学生だったアリシアと出会う。

お互いが惹かれあっていくのだが、どんな時でもアリシアが内向的なナッシュをリードする様は、とても微笑ましい。

しかし、妻が妊娠した頃からナッシュに異変が見られる。

統合失調症と診断されたのだ。

作中で、ナッシュが会話していたあの人もこの人も、みんな幻覚だとわかったときは恐怖を覚えた。

苦しい闘病生活は、見ているこちら側も精神をすり減らしてしまうほどだ。

薬の服用、ショック療法、あらゆる手が尽くされた。

どこにいてもナッシュのそばには幻覚が付きまとい、彼を糾弾する。

症状が治まったと思えばまたぶり返す。入退院も幾度となく繰り返した。

快復までに30年ほどを費やした。

アリシアの支えがなければ、彼は廃人になっていたかもしれない。

快復後はプリンストン大学に復帰した。

相変わらず幻覚に悩まされたが、幻覚を徹底的に無視することで折り合いをつけた。

そして1994年、ノーベル経済学賞を受賞。

受賞後のスピーチは、妻との闘病生活の末にたどり着いた答えが、簡潔でいて、そして力強く示されている。

このスピーチを聞けば、この作品の題の意味がきっとわかるだろう。

 

 

この作品のもうひとつの見どころは、ナッシュとアリシアを演じる、俳優たちの迫真の演技である。

ナッシュを演じるラッセル・クロウは、「グラディエーター」や「レ・ミゼラブル」で有名であろうか。

これら力強い役とは打って変わって、ナッシュの社交性の無さやコミュ力の無さが、ひとつひとつの仕草から伝わってくる。

闘病生活で次第にやせ細り、やつれていく姿や、いるはずのない幻覚に恐怖し、怒鳴り散らす様は、圧倒的だ。

ラッセル・クロウの役の幅広さにとても関心する。

 

妻のアリシアを演じるのは、ジェニファー・コネリー

本作品でアカデミー賞助演女優賞を受賞した。

聡明さに加えて、カタブツナッシュの研究室に突撃訪問するような大胆さも備えた女性である。

ナッシュに足りないものを補ってくれて、そして彼の心の支えとなる存在だ。

統合失調症にナッシュ自身はかなり苦しんだが、妻アリシアも彼への献身の最中で同等に苦しんだ。

彼女が自暴自棄に陥る場面があったが、その悲痛な叫びは、聞いていられないほどに辛いものだった。

 

最後に、

もしナッシュが病に陥っていなければ、と考えた。

もし病に陥っていなければ、もっと数多くの偉大な理論を発見していたかもしれない。

もっと数多くの偉大な賞を取っていたかもしれない。

色々考えてみたが、やはり病があってこそのナッシュなのかもしれない。

人生の大部分を幻覚に苦しめられながらも、決して数学を捨てなかったナッシュ、その彼をそばで支え続けた妻アリシア

この二人の不屈の精神が、数々の理論を超えて、ナッシュを偉大たらしめているのだろう。